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イベントレポート

日本児童文学者協会関西センターが主催した講座などをレポートします

 

2021年【おうちde児童文学】

『今どきの子どもたち』~変わってきたこと・変わらないこと~

日時 8月8日(日)13:00~15:00

講師 草香恭子氏

レポート 中松まるは(関西センター運営委員)

 

 関西センター主催のzoomを使った勉強会は【おうちde児童文学】の呼称でおこなわれます。今回は、講師として教職を長年続けられ児童文学作家でもある草香恭子氏をお招きしました。

 児童文学ではしばしば小学生が主人公で小学校が舞台となります。そういう作品を書くには現代の子どもたちと学校がどうなっているかを掴んでおく必要があります。そのためには教師の話を聞くのが一番だという意図から今回の勉強会は企画されました。もちろん「今」を知りたいという純粋な興味もあります。

 勉強会の前半は、パワーポイントを使い、「人気のある本はイラストが多い傾向がある」など、現代の子どもたちについて多分野に渡り草香氏にお話をいただきました。

 後半は参加者から質問を受け付ける時間とさせていただきました。草香氏にはどんな質問にも的確にお答えいただきました。とても参考になりました。

 今回のテーマには、沢山の方に関心を寄せていただきました。定員の関係上、募集開始後すぐに締め切りせざるをえない事態にもなりました。申し込みいただいたにもかかわらず参加できなかった皆様には改めて陳謝いたします。関西センターはまた新しい企画で【おうちde児童文学】を開催しますので、その際は奮ってご応募ください。

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✰第6回児童文学同人誌フェスタ✰

 

2019年12月1日(日)14:00~17:30 参加者多数  

場所:ラッセホール5F会議室(神戸)

 

12月1日、神戸ラッセホールで同人誌フェスタがありました。関西で開かれるのは初めてだそうです。関西センターの運営委員の皆さま、準備等々、たいへんだったことと思います。お世話になりました。

 フェスタは、時間ちょうどにうたかいずみ氏の司会進行のもと、関西センター代表の安田夏菜氏の挨拶から始まりました。

 

第一部は山本悦子氏の講演「わたしが作家と名乗るまで~同人誌ももたろうと歩いた25年~」でした。山本氏はポプラ社『ぼくとカジババのめだまやき戦争』(童話の海)でデビューされてから数々の作品を出版され、最近では『神隠しの教室』で野間児童文芸賞を受賞されました。同人誌ももたろうの立ち上げのきっかけとなった鬼ケ島通信のこと、そこで末吉先生をはじめ編集者さんなど大切な人たちとの出会いや、仲間との研鑽の日々などを中心に話されました。

 

同人誌に入っている者として印象に残ったのは、しばらく本が出なかった時期も「ももたろう」の原稿を書き続けたこと、また同人誌は実験の場だという言葉でした。たとえ本にならなくても、自分の書きたいものを自由にかける場所だと話されました。『神隠しの教室』も同人誌に連載した作品だそうです。

 

最初から最後まで興味深い話ばかりで、あっという間の一時間でした。人前で話すことにそれほど緊張されないということで、お話も上手で、引きつけられました。「児童文学作家と名乗るときに今でもピリッとしてしまう、それは覚悟がなかったから。覚悟を持って書いていきたい」と講演をしめくくられました。

 

質疑応答タイムでは、ファンタジーとリアリティの作品の進め方について教えていただきました。ファンタジーこそリアルに書く必要があるということ、リアリティの作品では話を聞いたり調べたり取材に行くとのことでした。また小さい頃からお話を書いていたかという質問に対しては、小5の頃から友だちと書いてお互いに見せ合っていたということでした。

                                         

 3時過ぎから第二部、同人誌の紹介やフリーマーケットでした。

今回は19の同人誌の参加ということで、初めて聞く同人誌の名前もありました。童話の他にも詩や翻訳など多彩な同人誌に触れる機会が持ててよかったです。他の同人誌の人たちと話したり雰囲気を感じたりで、世界が広がった気がしました。機会があれば、また参加したいと思います。

 

楽しい懇親会にも出て帰宅が夜遅くなり長い一日でしたが、充実した一日でした。

                                 

レポート:西村さとみ

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2019年 関西センター「秋の講座」〜短編講座

日時 10月6日(日)13:30~16:30

講師 あんずゆき氏  参加者 9名(作品提出10名)

レポート 渡邊千砂

 

今回、こちらの講座に初参加させていただきました。

何もわかっていない私がレポートなど引き受けてもよいものか?(しかも協会員でもない)と、戸惑いましたが、せっかくお声をかけていただいたので、私なりに頑張ってレポートさせていただくことにしました。

少しでも講座の様子をお届けできれば幸いです。

 

まず9月の初めに原稿が送られてきました。400字詰め換算30枚以内で10作品。

ファンタジーからリアリティーまで、いろんなジャンルの作品が揃っていて、読み応えがあり、純粋に一読者として楽しませていただきました。

また作品を読みながら、どんな方が書かれたのかな? などと想像し、実際にお目にかかれるのも楽しみの一つでもありました。

参加者の皆様、熱い思いの伝わる作品をありがとうございました。

 

講座は、一作品に15分ほどの時間配分となることもあり、あんず先生が一作品ずつ講評してくださるスタイルとなりました。

 

あんず先生が何度もおっしゃっていたことは、

 

『詳細のイメージをきちんと設定しておく』

ファンタジー作品で、一読してもわかりにくい作品がある。なぜか。

それは、詳細のイメージをきちんとおさえていないから。

詳細のイメージがきちんと決まっていないから、伝わらない。

 

『ありえない世界を書く=逆にリアリティが必要』

わからない人間が読んでもわかるように書く。

誰もがわかりやすい文章を書く。

あいまいさをきちんと押さえて書く。

特にファンタジー系の作品は、読者が「?」とならないように、詳細のイメージが大事。作者があいまいなものは、読者には伝わらない。

 

と言ったことでした。

作者自身が、きちんと思い描けていない物やシーンは、読者にはイメージしづらく、ストーリーが入ってこないのだと言うことを痛感しました。

また、自分ではわかっているからと、書かずに飛ばしてしまっていることも、あんず先生に「それ、書いてね!」と突っ込まれる場面も何度もありました。

 

それぞれの作品についておっしゃっていたことは、

 

・テイストを統一する(文学系かメルヘン系かどちらかに統一)

・対象年齢をきちんと意識する。

・短編は、書くことを絞り込む。削ぎ落としていく。

・印象の強い言葉は多用しない。

・セリフは短い方がいい。

・アイテム、主人公の名前などは、物語の最初の方に出す。

・画家さんが絵にした時に、どういうイメージで描けるかをきちんと考える。描けないシーンは書かない。

・短編の場合、こだわりは必要かどうか見極めが必要。

・設定の甘さ、矛盾のないように。

・特定の地域を出す場合、知らない人にもきちんとわかるように場所の説明がいる。

・異界の人物を登場させる場合は、その世界観が大事。

・語尾は「です・ます」調か「だ・である」調か、統一させる。

・「・・・」ではなく「……」と、三点リーダーを偶数個で使う。

 

と、基本的なことから、突っ込んだところまで細やかに講評してくださいました。

さらりと読んで、なんとなく感じた違和感を、先生の「これどういうこと?」と言う問いかけで、「そっか! そういうところが腑に落ちなかったのか……」と気づくことができました。

あんず先生は「重箱の隅をつつくように……」とおっしゃっていましたが、そう言う視点で作品を見ることができないと、作品にリアリティをもたせることができないのだろうなと思いました。

なんとなく思いつきと勢いだけで書いてしまう私には、耳の痛いことばかりです。

 

講座を終えてからの私の課題は「あたりまえをきちんと書ける」ことです。

あたりまえにある物を、知らない人に言葉だけできちんと伝えることができるか、と考えてみると意外と難しいものです。

そう考えると、日々の会話の中でも言葉のセンスを磨く訓練はできるのではないでしょうか。

絵を描く人が、デッサンの練習を積み重ねるように、身の回りにある「あたりまえ」ときちんと書く練習から積み重ねていきたいなと思っています。

 

原稿の添削をいただくこともできました。どのページにも、びっしりと書き込まれていて、時間をかけて丁寧に読んでくださったことがわかります。

もう一度しっかり見直して、自分の思い描いた物語を表現できるように、頑張りたいと思います。

最後になりましたが、講師のあんずゆき先生、運営委員の皆様、参加者の皆様、緊張して落ち着きなくそわそわしていた私を、あたたかく見守ってくださって、ありがとうございました。

おかげで、とても充実した三時間を過ごすことができました。本当にありがとうございます。心から感謝申し上げます

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2019年 関西センター「春の講座」〜長編に挑戦しよう

 日時  5月12日(日)13:30~16:30

講師 八束澄子氏  アシスタント 森くま堂氏    参加者 作品提出5名 聴講15名

レポート しんやひろゆき

 

私は協会員ではない。そんな私がなぜ参加させていただけたかというと、会員以外の参加者も受け入れてくださっているからである。有り難いことである。開かれた会にただただ感謝である。そんなこと言ってないで、早く入会させてもらえよという話であるが、ご尤もである。この間も楠章子さんから「まだ入っていないことに驚きやわ」と驚かれてしまった。これまたご尤もである。私事にはなるが、来年3月の定年を機に執筆活動に全力を注ぐつもりをしているので、そのタイミングで入会させていただこうと思っている。そんなわけで、どなたか2名の方、その節には私の入会を推薦してください。お願いします。

 

さて、そんな話はこっちおいてさておいて、早速レポートを始めたいと思う。

会の冒頭で児童文学者協会関西センターの代表の交代の報告があった。新代表は安田夏菜氏。安田氏の就任のご挨拶の後、講座がスタートした。

 

今回の講座のテーマは「長編に挑戦しよう」。だじゃれなのか? さすが「関西」センター、と一瞬思ったのであるが、そういうわけでもなさそうだ(そのことに言及した人はついにいらっしゃらなかった)。200枚以内の作品を応募したところたちまちのうちに締め切りになったとのこと。いくら5人限定とはいえ、これはすごい。感嘆するばかりである。私も出したいと思ったのだが、長編の持ち原稿が400枚のものしかなかったのであきらめた。

 

講師は八束澄子氏。「季節風」などでもがんがん合評をされているだけあって、歯に衣着せぬ講評には厳しさとともに、優しさも溢れていて、講評される者にとっては泣いたり笑ったり大変だったと思う。思うが、これも作品のためである。がんばりましょう!

 

さて、肝心の講評の内容である。

とはいえ、5つの作品全ての講評の内容を事細かに記すのは現実的ではない。わずか3時間の間に、講師からだけでなく、参加者の皆さんからの実にたくさんの言葉が、部屋中に飛び交い続けたからだ(私がこの数年で過ごした3時間の中で、最も短い3時間であったことをお伝えしておく)。というわけで、講師以外の方からの分も含め、特に心に残った言葉のみ記させていただくことをお許しいただきたい。

 

○楽しんで書いていることがよく分かる作品だった。でも、楽しめなかった。楽しめなかったのは、感情を揺さぶられなかったから。登場人物に感情移入できなかったからだと思う。→ 感情移入できる登場人物(主人公)を最初に登場させる。

○展開が予定調和に終わっている。驚きがない。読者を裏切る工夫が大事である。

○キャラ設定がありきたり。

○この展開に必然性があるのか?

○説明的な文章が続くのは退屈。性格描写は地の文ではなく、アクションで。

○「もっと書きたいのに、枚数が限定されてしまうと、どうすればよいのか分からない」という質問に対して「いったん書きたいだけ書いて、それで見渡してみる。そうすると、削るべきところが見えてくる」

○途中で作者の思いが前面に強く出てしまっているため、結末が分かってしまう。

○主人公たちの日々起こるたくさんの葛藤を書いていけば、今同じように苦しんでいる子どもたちに届く作品になるのでは。

○(講評を受けて作者の言葉)「ごまかして書いたところを指摘された」(講師)「それが合評です」

○出すことに必然性が感じられない登場人物(親子)の描写が、必要以上にリアル過ぎて印象に残り過ぎる。親子のその後が気になるほどだが、最後まで出てこない。

○イジメの描写で、現在の学校教育現場での対応では絶対に有り得ない場面がいくつかあったのが気になった → 時代設定を考え直す。

○書き手として、誠意が感じられる作品だった。最後のシーンが胸に落ちる。派手さはないが、生きることを励ます作品。

○(上と同じ作品に対して)読んでいて既視感を感じた(よくある話)。主人公が全く動かないで、向こうから来てくれる。話も丸く収まっていて、ひっかかりがない。

 

質疑応答では「山場が分からず、説明になってしまうのはどうすればよいか」という質問が出た。

八束氏の答えは「書き終わってから、しばらく寝かせる。それから読み直す。推敲する。繰り返す。このとき、登場人物の一人一人から見直す。そうすると、新しい気づきが生まれる。どこを山場に持ってくればよいのか、分かるようになる。これを体得できるようになるまで繰り返す。書くことに王道はない」

 

この質問に対しては、前代表の中川なをみ氏からも回答をいただいた。

「主人公の視点、脇の登場人物の視点で読み直すのが一番。そのことにより、人物同士の関係性が見えてきて、やがて作品全体を俯瞰できるようになる。どこが弱いのか、どこを強調すればよいかなども分かるようになる。最後の仕上げとして、不必要なところを削除する(せっかく書いたのにもったいないと思うが、また別の作品に使う)。さらに自分が何を伝えたかったのかをもう一度見つめ直し、書き足す。リアリズムで書くのか、エンタメで書くのかは、何を書きたいのか考えれば、自ずと決まってくる」

 

何れも深い言葉である。

 

最後に八束氏から「書き終わって、これが自分が分かりたかったことなのかと分かる。自分の世界観を広げたい。だから書く。文学とはそういうものだと思う。さらに書いた作品を持ち寄って、批評しあうと新たな気づきがある」と、本日の会の意義を述べられ、締めくくられた。

 

私事ばかり述べて恐縮だが、私は今一から創作の勉強をし直しているところである。ただ一人で勉強していると、迷路に迷い込むように何が正解なのか分からないようになることがある。こうして人が書いた作品を読み、考え、そしてまたその作品について同じ志を持つ人といっしょに、どうすれば良くなるのかを考える。そうすることにより、作品を書いた人だけでなく、いっしょに考えた人もともに成長していくことができる。今回の講座に参加させていただき、合評の良さをあらためて知った。また、こうして記録を書かせていただくだけで、新たな”気づき”もあった。こういう機会をいただけたことも含め、講師の八束氏、運営委員の皆様、参加者の皆様に感謝申し上げ、報告を終わらせていただく。

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2018 年 関西センター「秋の勉強会」

 

日時 10月21日(日)13:30~16:30

講師 長谷総明氏  アシスタント 中川なをみ氏    参加者 12名

 

今回レポート役を引き受けた私は、「絶対にできない」という思いがありながら、「でも、こんな(この時点でもうダメとわかっていた)失敗作があったら、後続の方が引き受けやすいのでは?」と勝手に解釈し、引き受けてしまったのです。案の定、まとめようとしている現在何も覚えていないというていたらく。で、思いついたまま書いて行きます。参加者の皆様、こんな順?とイライラしながらお読みください。

長谷氏は、くもん出版を三月いっぱいで円満退職された名編集者で、「賞をとっても売れない、『ホーン岬』や、『パジヤマガール』があるし、短編図書は推薦図書になりにくいので出したがらないが、アンソロジーは別」と内情を話してくださりつつ、一人15分以内の時間制限に追われるように作品の評、アドバイスに突入されました。

○何度もおっしゃったのは、『テーマを明確に』ということです。読みやすく、題材が身近で、伝えたいテーマを子どもにもわかりやすい言葉で。家族、友情、愛、平和、生きる力など不変なテーマを書いていく。幼年童話では特にそう。

○ハイライト(見せ場)は小さいのと大きいのと二か所はほしい。自分の思うままに書いていたら、話が違う方向へいってしまいがち。山場は言葉を変えたり、ふやしたりして自分で考えて作る。

○主人公は、サラリーマンとかではなく読者にふさわしい人物に。読者対象の子どもの目線で書く。

○どこかで読んだ気がする作品もありかな? オリジナリティは、そう簡単に出るもんじゃない。本家を超えるように書けば。最後に違う展開があればいい。

○ラストをあいまいにわからないままおいておくのは、ダメ。作者がわからないのはもってのほか。書く面白さはないかもしれないが、どっちの方向を向いて書くか位は決めておく。

○ストーリーを会話にたよらないこと。この頃の作品は会話が多くて地の文がすくない。バランスが大事。が「若おかみ」は読みやすくてありだと思う。

○商業出版は、高学年だと百枚前後、中学年六十~七十枚、幼児二十~三十。まず編集会議でチームが納得し、部長、営業、社長と進むが、担当編集者が「何を売りで本にしたいのか」が皆にはっきりと言えるのが大事。つまり「何がテーマなのか」を端的に。

○いろんな謎が一つのオチでおさまるとスッキリする。(そらそやわ)

あっという間の三時間でしたとも。ほとんどの時間をこのレポートに心をうばわれ、おろおろしていました。自分の作品が一番目でほっとしました。が、結果は棚の上のほうへ上げ見ぬふりをして過ごしました。皆様ありがとうございます。終わりました。

次回は来年だそうです。いつも問題をいっぱいくださり、解決もまだまだですが、来年になったら、どうにかしようと、オニに笑われる今日この頃です。  

                                  レポート:エイ子ワダ

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2018年 関西センター 「春の連続講座」第4回目 実作指導(合評会)

 

日時:2018年7月15日(日)13時30分~16時30分

講師:中松まるは氏 アシスタント:うたかいずみ氏    参加者:21名

 

7月15日(日)13時30分より日本児童文学者協会関西センターにて『2018年度 春の連続講座 第4回』が行われました。最終回の実作指導となった今回の実作指導の講師は、中松まるは氏。

不勉強な私は、ひらがなのお名前から、てっきり女性だと思い込んでいたのが、若々しい男性だったので(それでも、50を超えたとおっしゃていましたが。)まずびっくり。

次のびっくりは、受講生の座席。今まで『早いもん勝ち』っていう感じの自由席だったのが、中松氏の正面には今回の作者がずらっと座っていらっしゃって(多分、有無を言わさず)……。

さらに、追い打ちをかけたのが、オープニングトーク。「ボクは褒めませんからね。キツイこと言いますよ。作者の人間性を否定するわけじゃないけど……」と宣言。

合評作品を提出してから3か月。自分の作品の講評を待ちに待ったであろう作者の皆様のお顔に緊張感が走り、「ああ、お気の毒」そう思わずにはいられませんでした。

 さらにさらに、対象作者の皆様は、始まる前に何やらアンケート用紙のようなものをお書きになって中松氏に提出されていたようで、一回目、二回目のように作者のコメント(私なんて完全に言い訳がましい“自分は頑張ったアピール”だったかも)もないままに、中松氏はズバズババンと作品の中に分け入るように評されていきました。

 7つの作品への講評を時間で等分したりしない。

評の順にも意味がある。

質問タイムなんてない。きっと時間が足りない。

早々に、ドキドキするような言葉が次々と飛び出し、私の「お気の毒」感はマックスに。

しかし、あっという間の3時間が過ぎると、「お気の毒」感に変わって私の心を占めたのは、「レポートどうしよう……」というわが身の問題。この回の緊張感と中松氏の個性あふれるご教授をレポートするには、なりふり構ってはいられない。自分の地を丸出しにしても間に合わない! と覚悟を決めました。

 

中松氏の第四回から、私は『作品全体を俯瞰すること』『独りよがりで書いてはイケナイ』ことを徹底して教わった気がします。

まず最初に、作者に提出を求められたレポートから、各作品ごとに①題 ②一行あらすじ ③テーマの三点を読み上げてくださいました。すると、作品を拝読した印象と食い違っていて、「え? そんなお話でしたっけ?」と思うものもありました。「どうですか?」と、作者以外の受講生に呼びかけの後、『書きたいこと≒書いてあることになっていて、読み取れることとずれている』と、作者の思いが読者に届かないことがある。叙述がどんどん枝葉末梢にとらわれて、肝心のテーマがぼけてしまっていると厳しいご指摘がありました。しかし、それだけで終わらず、あらすじと作品のテーマがあっていない原因を指摘し、あらすじの方を尊重するなら、こんな流れに。テーマの方を尊重するなら違う流れにと、ストーリーやエピソードの交通整理をしてくださる所に、厳しさの中に溢れる愛を感じました。

 

次に、中松氏は『児童文学の世界で成り立つ素材かどうか』を先人の作品に照らしてみることを教えて下さいました。

例えば、「主人公の大人の女性が子どもたちにフシギな力を見せる話でしょう。なら、これは『メリー・ポピンズ』ですよね」とか、「人間ドラマの中に旅行記を入れるなら、松谷みよ子さんの『私のアンネフランク』がありますよね」と言う具合に、同じ類型の名作を挙げ、そこに至るには何かが足りないのではないかと問いかけられました。旧作をお手本にする。しかし、本になるにはそれを超える必要がある。あなたにできるか?(う~ん厳しい。と、この時点で私は沈黙でした)

更に、「ある評論家は、こんなことを言います」と、前置きして、全ての物語は『二項対立』で成立している。すべての物語はこれで成り立っている。例えば、

不信⇔信用なら、手ぶくろを買いに

善⇔悪なら、仮面ライダー

田舎⇔都会なら、アルプスの少女ハイジ

あほ⇔かしこなら、ビリギャル……と言った具合。

特に児童文学では、子どもの成長に合わせて、できない→できる 悲しい→楽しい という流れが多く、書くときにはこれを意識すると物語がまとまりやすい。

そして、その物語の中に人間ドラマを盛り込まなくてはならない。人間ドラマとは情と行動と関係の変化と葛藤の無限ループである。そのうち、関係の変化がゆっくりであればあるほど読者はハラハラドキドキして、主人公に感情移入して、のめり込んでいく。だんだん盛り上げるために最初はゆっくりする必要もある。それなのに素人さんはそこが速い。速すぎると力説されました。

 

その他にも、一人で書きたいことを書くのではなく、もっと読者を意識することが大切とも教えていただきました。読者は主人公に感情移入するのだから、主人公が主体的に動くことが不可欠。主人公が自分の力で何かを得るストーリーに読者は共感する。作品の中に、大人ののぞむ子ども像を示唆するような、作者の分身が登場すると、主人公が自分で動き出さない話になる。やさしい大人のお説教でかしこくなる話はやめる。読者が主人公と自分とシンクロさせることで、読書自身の人生でも困難を乗り越えていってほしい。児童文学とはそうしたものであるはず。主人公を軽んじることは読者を軽く扱うことと同じ。とのご指摘でした。

 

二枚のホワイトボードを駆使ししながら、テーマに沿ってバッサリ削除したり、作品に小見出しをつけて順を入れ替えて再構成したりしてしまうといった力の入ったお話は、講評と言うより一作一作への愛のムチでした。多分、中松氏は今回の合評作7作品全てを再構成したお話を考えてくださった上でのご指導だったのだと思います。熱く力強い講座を、

「これで、みなさんは、どう書くべきかを教えてもらった。しかし、何を書くかは自分で見つけるんですよ」

と、締めくくられました。

 

中松氏はカバンを手元から離されません。大きなウエストバックを肩から掛けたままお話しされ、途中でそのかばんに絡め取られそうになり、アシスタントのうたかさんの力を借りる場面も……思わず笑ってしまうと、「受けた!」とニヤリ。(え? 狙ってたの?)

レポートさえなければ、中松氏の人間観察だけでも、充分楽しい三時間となったはずです。講座を終えて、中松氏はどんな方か?と問われれば……

『中松氏は少年の心を持ったおじさんと見せかけつつ、頭の中には数多の物語の類型が納められた愛のある作品アナライザーだ』と、答えよう!と思います。本当にありがとうございました!

 末筆になりましたが、2018年春の連続講座は、中川なをみ先生ごあいさつにあった『講師には、論客を揃えました』というお言葉に深く納得した本当に実り多い講座でした。

お世話いただいた関西センターの皆様方。本当にお世話になりました。ありがとうございました。

 

                                                                               レポート:草香恭子 

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日本児童文学者協会 関西センター 

「春の連続講座」第2回目 実作指導(合評会) 

開催日時:2018年5月20日(日)13時30分~16時

講師:吉田 道子氏 アシスタント:森くま堂氏

参加者:20名

レポート:廣澤 貴理子

 

 5月20日(日)13時30分より日本児童文学者協会関西センターにて『2018年度 春の連続講座 第2回』が行われました。参加者の作品の実作指導がいよいよスタートです。

今回、実作指導と講評は吉田道子氏をお迎えして、「児童文学を書くということは」と核心に迫ったお話を拝聴しました。また、アシスタントの森くま堂氏の進行により、参加者からも活発な意見が出て実りある会となりました。

 

 今回は21作品中、7作品の合評を行いました。まず、この作品を書くに至った思いを作者がコメントした後、参加者からの感想や質問へと続き、吉田氏より講評をいただきました。時間が経過するにつれ、会場は熱を帯び、一言一句、聞きもらすまいという姿勢が印象的でした。と同時に「作品を通して、何を表現したいのか?」という自分への問いも深められている様子を感じました。

吉田氏から丁寧な講評をいただき、参加者からも様々な観点から感想や質問が出て、活発な合評会となりました。作品の詳細は紹介できませんが、吉田氏の講評から私自身、心に強く残っている言葉を紹介させていただきます。

 

・作品の舞台の設定→舞台にしようと思い、心魅かれた理由を作品の中に描いていく。

・登場する人物の心情の変化を説明ではなく、動作だけで表現するように描写する。

・説明や形容詞を使用する表現に注意し、極力、使わないように工夫する。

・心情など言葉で表すことが難しい場面をどう表現していくか?

考えて、考えて、考え抜いて、言葉を選んでいく。徹底的に考えることが大事。

・徹底的に考えることで自分のスタイルを知ることができる。

それが書く、描写の面白さに繋がる。

・物語を進めるために、会話をたてる。

・登場人物の特徴、個性が際立たつよう会話の言葉を選ぶ。

・一人称、三人称にするか、最初に考えて決める。

・タイトルと物語の展開のギャップはない方が望ましい。読者の存在を意識して

タイトルを設定する。

 ・作品で何を書きたいのか?

物語として形が整っている作品でも、なぜ?と疑問に感じる箇所はもっと細かく

丁寧に、かつ、深く掘り下げて描写する。

  ・書き手が「表現したい」と思っていることは何だろうかと問いかけながら、こぼれおちたものをもう一度、すくい取り、問いかけ、組み立てる工夫が必要である。

  ・長編を書く場合、構築の工夫。組み立てにおいて、書き手が書きたいことだけを

書くという強引な展開になっていないか、読み手の存在を意識することは大事。

  ・そこに暮らす人々の日常の細やかな営み、行き交いを拾い、丁寧に描写する。

  ・表面的な感動よりも、日常の暮らしの中で矛盾していることも含めて、そこに

生きている息吹を描写する。

  

 質疑応答の終盤で中川なをみ氏が「表現の世界において、作品を創作していると目の前に壁が立ち塞がる時があります。その壁を乗り越えたかと思うと、また次の壁が見えてくる。「説明」と「描写」の違い。特に子どもの本であれば、描写が良いとわかっていても、どういうところをどのように表現すれば良いのか、わからない時は自分の中でも揺れていた。しかし、作品の作りを客観的に見て、考えていると、見えてくることがあり、それまで大きな壁だと思っていたことが無くなって自由になった経験があります。

今回の合評会でも、「説明」と「描写」という言葉がよく出ていたので、もう一度、お話しをしていただけないでしょうか?」と提案してくださいました。

 これを受けて吉田氏から「説明が絶対ダメということではなく、説明でしか表現できないところもあります。どういう場面でどのように使うかということをしっかりと考えることが必要だと思います。例えば、会話の中で説明させないことも大事です。登場人物の動作を描写することで、心情や場面の展開が読者へ伝えられると思います」とお話くださいました。

 さらにまとめとして

「自分の中で生きることへの哲学や思想がないと、自分の伝えたいことを表現できないのではないだろうか?と思っています。私自身は日々の生活の中に生きる哲学を見出したい、追求したいと考えています。自分の生きる哲学を探り、抉り取り、そこで言葉を選び、表現することが子どもの文学ではできると思うのです。人として成長の発達途上にいる子どもたちへ君たちはどう生きるのかということも伝えられる。そういった意味でも子どもの文学はとても面白いと思います」吉田氏の言葉は胸に響きました。

 

 吉田氏のお話を拝聴して、私自身も日々の生活の中で自分なりの生きる哲学や思想を見出し、自分の言葉で子どもたちへ、あるいは取り巻く大人の方へ伝えられる文章を書ける者になろうという思いを胸に抱き、会場を後に帰路へつきました。 

日本児童文学者協会 関西センター 2018年度 春の連続講座

 

第1回 講演会

4月15日 13:30~16:30  参加者21名

講師 いとうみく氏

 

今年度の春の連続講座の第1回目は、いとうみく氏による創作セミナーでした。

 いとうみく氏は『糸子の体重計』でデビューされて以来、幼年物からYAまで幅広い多くの作品を出版され、活躍されています。

 

最初に参加者への質問があり、「プロを目指している」「一冊、本を出したい」「書くだけでいい」の三択でした。講座の参加への意識を試されているようで、緊張しました。また、若者の読書離れのことから、児童書のみならず最近の本の出版事情の厳しさにも言及されました。ベストセラーしか売れない、出版は増えているが消えていくものも多い、などです。

 その中でも、いとうみく氏の、売れそうなもの受けそうなものを書くのではなく、自身が書きたい書くべきと思う、自分の物語を書いていくことが大切であるし、またそうでなければ続かないという言葉が印象に残りました。

 

出版社に持ち込んで断られ、何が悪いのかわからなくなったとき「季節風」という同人誌に出会い、入会されたそうです。掲載作品や投稿評をくり返し読み、人間をちゃんと書いているかどうかということが一番大切なことだと気づかされたそうです。その後『糸子の体重計』など掲載作品が出版されていきました。

デビューの仕方には、「出版社への持ち込み」「同人誌に入る」「コンクールに応募する」など、いくつかあります。本が出るまでは、カン違いし続ける強さ、しつこさや鈍感さも必要かもしれない、けれど作品は苦しんで考えぬき、もがいて書いたものでなくてはならないと言われました。

 

創作の方法について話される中で強く印象に残ったことは、プロットは基本的に作らないと言われたことでした。『空へ』を例に挙げながら、「父を亡くした中1の男の子とその幼い妹が町医者の診察室にいる」といったイメージがまず浮かび、そこからふくらませていったということでした。書きながら見えてくるものがあり、その中で知っていく、つかめたと思える瞬間が楽しいと話されました。

 

本の読み方は人それぞれで、自分の書いた作品で傷つく人がいるかもしれないと思うことは怖いと言われました。けれども書きたいことがあり、今書かねばならないと思ったら、登場人物一人ひとりに対して責任を持ち、手を抜かないで、覚悟を持って出したいという言葉に、いとうみく氏の作家としての情熱や矜持を感じました。

 

参加者の質問にもいろいろ答えてくださいました。

 物語のアイデアは、降って湧いてくるというわけではなく何かないか何かないかとずっと思っていてねばりにねばって、ふっと思いつくことがきっかけになるということでした。

幼年からYAまで幅広く作品を書かれていますが、グレードが上になるほど深く入り込んで書き、反対に幼年童話ではいかにそぎ落としていくかが大切だということでした。

また取材に関しては、『車夫』『天使のにもつ』などでは人力車屋さんや保育園に、メモを持参して聞く、手伝ったり体験をさせてもらうなど、とても積極的に情報を得ておられます。その姿勢が作品のリアリティにつながっていくのだと感じました。

取材の話を聞きながら、人間に興味がなくては物語は書けないと言われたこと、とても腑に落ちた気がしました。また、児童文学には子どもの代弁者としての役割があり、その背中を押せるような書き手になりたいと話されたことも心に残りました。

 

                                                                          レポート  西村さとみ

イベントレポート

 

2017年 関西センター 秋の勉強会

「子どもの本の現在(いま)」 2016年~2017年の本から

 

日 時 2017年10月15日(土)13:30~16:00

参加者 40名

講 師 土居安子氏(大阪国際児童文学振興財団理事)

 

 秋雨がしとしと降る10月の午後、関西センターで秋の勉強会が開催されました。

 受付でいただいた資料には、A4用紙16枚に文字がびっしり。思わず数えると1枚に54字46行ありました。

 中川代表からの挨拶では、「児童書の現在について勉強するのに、講師を誰にお願いしたらいいだろうと考え、たくさんの子どもの本に精通しておられる土居さんにお願いすることにしました。」とのお話があり、確かに、いただいた資料を見ても様々なジャンルに渡り紹介しておられ、土居先生の子どもの本への愛情が伝わってくるようでした。

 土居先生は普通の人の2倍近いスピードで「ぶわー!」と話をされますが、まったく閊えることがなく、しっかり笑いまで取られ、すっかり引き込まれてしまいました。

 「作家の先生方を前に話し辛い。」と言いながらも、「批評のないところに良いものは生まれないと思うので。」と前置きし、いろいろな意見をお話いただきました。ご紹介いただいた本は、「お勧めの本というわけではなく今の傾向を考えるために取り上げた。」とのことでしたが、先生の話を聞くとどれも面白そうで読んでみたいと思うものばかりでした。

 

 本について、「すべての子どもに絶対に良い本はないと思います。」と言われた後、「文学や絵本というメディアとしての特質を十分に活かし、それぞれの子どもの生活や思いに寄り添った本は、その子にとってかけがえのないものになると思います。」と言われました。

「子どもの本は、(当たり前ですが)大人が書いて、大人が編集して、大人が売って、大人が選んで、大人が手渡しますが、最後に選んで読むのは子ども自身であり、やっぱり大人と子どもは違うと思うので、今の子どもにどうやって良い本を届けていくかが難しい。」と言われたのがとても印象的でした。

子ども同士のコミュニケーションの方法も、私達が子どもだった時とはまったく変わってきている中で、今の子どもに届くものを書くのはとてもハードルが高いと感じました。

また、最近の子どもの傾向として、「一人称の文章でないと読みにくいと感じるようだ。」と言われました。土居先生は「一人称問題」と名づけておられました。

本の装丁についても、「漫画的に描かれた主人公が表紙に載っているものを選ぶ傾向がある。」とのことでした。装丁については、まだまだ教えていただきたいことがたくさんありました。

話は尽きないまま、16ページの資料としてあげられた202冊すべてを紹介され、時計を見たら15時30分ぴったりでした。その後の質問タイムでは、やはり装丁が話題になりました。

あっという間の2時間半でしたが、本当に勉強になりました。

                                                           レポート 西本博美

                                    

2017年 関西センター 春の連続講座「幼年童話」

第3回(実作指導)

日時 2017年 7月16日 午後1:30〜4:30

参加者 14名 (1名欠席)

講師 北川 チハル 氏  アシスタント おち まさ子 氏

 春の連続講座も今日が最終回。前回に続き2回目の実作指導でした。

今回の講師の北川先生の実作指導は、提出された8作品を1作品につき18分に区切り、休憩を挟んで4作品ずつ行いました。

 まず作者の思いを聞き、次にアシスタントのおち氏の感想、北川先生の講評後、参加者からの感想を聞いて、最後に作者が感想を述べるという形式で進行しました。

 北川先生はそれぞれの作品について的確な課題を提示され、それをどのようにするとよいかをとても解りやすくアドバイスして下さいました。

   幼年童話で大事なことは、K向日性 K共感性 S成長性

  「チハル先生のこわざ」を教えて頂きました。

  1、幼年童話は3Sで書く

    (simple 簡潔に straight率直に  scene情景、場面が浮かぶように)

  2、漢字、熟語は使わない。グレードに合った言い方

     ひらがな お薦め (幼年感覚つかみやすい)

  3、幼年童話のキャラクターは悪者にしない

     ドロボーでも必ず弱者の味方であること。愛されキャラにする

  4、幼年童話は、子どもの味方であること

     大人、作者にとって都合のいい話にしない

  5、幼年童話は、極力指示語は使わない

  6、幼年童話は、起承転結が大事。プロットシートを作ると良い

  7、録音推敲(音読推敲) 目を閉じて聞くことに集中する

 最後の質疑応答後、最終回ということで少しだけフリートークで盛り上がりました。

 今回の講座で学んだことを参考に推敲を重ねていきたいと思います。

                                                    レポート こやま じゅんこ

児童文学者協会 関西センター 2017年度 春の連続講座 『幼年童話』


第2回講演会

日時 2017年6月18日 13:30~16:30

参加者 15名

講師 北ふうこ先生

 春の連続講座も二回目を迎えて、ますます盛り上がってきました。今回は、合評形式の講座で、長年童話を書いている人も、書き始めて間もない人たちも、みんな真剣な面持ちでスタート。提出作品15作品のうちの7作品を合評。作品枚数は、6枚から25枚で、自然との共生をテーマにした作品が多かったように思われました。各作品を丁寧に合評をしていただき、書き手たちは目からうろこだったと思います。北ふうこ先生は、「幼年童話とは、就学前の子どもから小学二年生までに向かって、書かれた作品。各ページに絵があり、いわゆる絵童話というジャンルと同じです。絵本は、絵が中心で文字は少ない。中学年になると、絵のあるページと文字だけのページもあります」と言われました。中学年に向いているような作品もまじっていて、わかっているようで、わかっていなかったジャンルの分け方を改めて確認しました。また、新しく書き始めた方もたくさんおられたので、原稿の書き方もプリントをくばって説明されました。原稿は、「読んでいただく」という姿勢を忘れずに、丁寧に書くようにとおっしゃいました。今回の作品は、原稿の設定がかなりばらついていたので、今後書き続けていくための参考になりました。北ふうこ先生のわかりやすいご指導で、各自自作を書き直す意欲が湧いてきたと思います。

 次回講座は、7月16日です。講師は、北川チハル先生です。

                                                           レポート 石川純子

児童文学者協会 関西センター 2017年度 春の連続講座 『幼年童話』

第1回 講演会 「心を釘付けにする物語の書き方」

日時  2017年5月21日 13:30 ~ 16:30

参加者 13 名

講師  村上 しいこ氏

 

 毎年恒例となりました『児童文学者協会 関西センターの春の連続講座(全3回)』が、開催されました。今年のテーマは『幼児童話』で、第1回目は、村上しいこ氏による「心を釘付けにする物語の書き方」の講演会でした。

 村上氏は、『かめきちのおまかせ自由研究』で第37回児童文学者協会新人賞や、『れいぞうこのなつやすみ』で第17回ひろすけ童話賞を受賞された後、幼児からヤングアダルトまで幅広い読者層の本を多数出版されている人気作家です。

 講演の冒頭で、タイトルの「心を釘付けにする物語の書き方」の前に、「ちょっとだけ」という言葉を追加されましたが、ちょっとどころか大変踏み込んだところまでお話しいただき、参加者は皆、村上ワールドに引き込まれてゆきました。

 

 講演は、「物語とは……」という言葉で始まりました。でも、すぐに「昨年、私は自分が物語の中にいるような生活だったんです」と、村上氏の昨年の発病、入院、手術に至るまでの話が始まりました。参加者は、はらはらしながら正にその話に釘付けになりました。そして、最後に「この私の腫瘍は、良性だったのでしょうか、それとも悪性だったのでしょうか」と、ストンと質問で落とされました。

このように、想像することによって「物語」は始まるのです。

 また、村上氏は入院中も、医師や看護師、入院患者の方々の、日常では得ることのできない言葉や表情などを細かくメモして、たくさんの物語のネタを拾ってこられたそうです。生きている上で起こってくるすべての事、病という災いまで、創作の糧にされる……「本当にプロだな」と、感心してしまいました。

 

 次に、「『作家として成功するには、才能と運が必要だ』と、よく言われますが」と、編集者の方々との、面白いエピソードをいろいろ話してくださいました。

 良い編集者に出会う……これが運の要素だと思いますが、一番印象に残ったのは、「直し」に関する部分でした。

 書き上げたあと、何かモヤモヤする時は嘘がある時で、書き直しに躊躇してはいけない。

初期の頃、作品の書き直しを言われた時、「せっかく書いたのだから、もう無理」と思ったら、そこで作家への道は閉ざされる。作家になれるかどうかは、自分が書いたものをどこまで壊せるかにかかってくる。

また、出版社に作品を送る時は、パターンの違うものを複数送って、相手がどのパターンを望んでいるかをはかるのも、一つの手法だということでした。

 作家になるには、柔軟な姿勢が、必要だということでしょうか。

さらに、図書館でたくさんの本を読まれたこと、写して学ばれたこと、そして現在に至っても、手書きで書かれた物を清書して、それをPCに入力してから後も、何度も推敲を重ねられると伺いました。 才能だけでなく、努力も必要なんだとつくづく思いました。

 

 幼児童話で大切なことは、言葉のリズムをつかむため、声に出して読んでみること。

そして、子どもの半歩先を歩むこと。つまり、子どもたちが読んで、多分こうなるだろうと思うようには書かない。子どもたちの想像力に対抗するエネルギーが必要だという言葉は、強烈に心に響きました。

また、「登場人物を魅力的に描くには、普段から苦手な人とも付き合って、リアルな悪役のセリフや反応のネタ集めをしましょう」には、「なるほど」とうなずきながらも、笑ってしまいました。

 

 時折、フフフフ、アハハハと、チャーミングな笑顔を見せて下さるしいこ先生に、こちらの緊張もほぐれ、最後まで楽しく勉強させていただきました。

 お土産を、たくさんいただけた第1回目の講座でした。

                       レポート   工藤 葉子

日本児童文学者協会創立70周年記念会・懇親会

日時  2017年2月26日(17:30〜20:00

場所  ホテルグランヴィア大阪20階 名庭の間B 

参加者 77名

 

協会理事長である内田麟太郎氏のとても楽しい講演会後ということもあり、みなさんのお顔もニコニコとして、温かいムードで始まりました。

関西センター代表の中川氏と内田氏の挨拶に続き、今関信子氏から中川代表と関西センターを創立されてからのご努力などについてお話がありました。その後、乾杯の音頭をとってくださって会場には溢れんばかりの拍手が鳴り響きました。

お食事をいただきながら、副理事長の藤田のぼる氏が協会の歩みについてのお話をされました。そのあとにはクイズを出され、会場は大変盛り上がりました。

「初代会長の小川未明のお父さんの職業は?」など、児童文学者協会ならではの問題がいくつも飛び出しました。クイズに勝ち残った3名には素敵な賞品がおくられました。

 

司会の安田夏菜氏によるご出席の編集者や記者の方々への一言インタビューでは、とても貴重なご意見をうかがえました。

次には、創立70周年という歴史ある協会の会員のみなさまに見守られ、2010年以降に入会した新入会員の方々が壇上に上がられました。そして、一言ずつご挨拶され、児童文学に対する熱い思いを語られました。

もうお一人の司会の服部千春氏は、各テーブルを回り遠方からお越しの方や大先輩の作家の方々へ、インタビューしていかれました。めったにお聞きできない貴重なお話やご助言をうかがうことができました。

 

あっというまの2時間半でしたが、とても有意義で濃厚な時間だったと思います。関西でこのような素晴らしい記念会が催された意義は大きかったのではないでしょか。これからも、しっかり書いていこうと思いをあらたにできました。

会場には、これまでの機関誌や会員の発行物も展示されていて、協会の歴史が手に取るように分かりました。

関西センター実行委員の方々に、大変感謝いたします。

                                         レポート 白矢三恵

日本児童文学者協会創立70周年記念

内田麟太郎講演会

「絵本のことば・詩のことば」

日時  2017年2月26日(日)16時~17時

場所  ホテルグランヴィア大阪20階「桜の間」

参加者 53名

日本児童文学者協会理事長、詩人で人気童話作家の内田麟太郎氏の講演会。会場は満席で熱気にあふれていた。

内田氏は静かに語りながらも、中身はジョーク満載。くすくす笑い、ニタニタ笑い、爆笑を誘い、まさに、内田氏の作る魅力満載の作品のナンセンス、うつくしいことばのリズム、心にすっと入り込んでくる深みのある世界と同じだった。

スクリーンに絵本を映しながらお話しされた。まずは、『ぽっかりつきがでましたら』(内田麟太郎文/渡辺有一絵/文研出版)から始まった。

 

「ぼくは、パクリの内田といわれている。でも、上手にやったらオマージュともいう」と、笑いをとる。

詩人の父を持ち、若いころは詩人になろうか絵描きになろうか悩んでいたというくらい、詩が好きで、中原中也にも傾倒していたという。

 

ポッカリ月が出ましたら、

舟を浮べて出掛けましょう。

中原中也『在りし日の歌』より「湖上」

 

中也の詩はずっと自分の心の中に入りこんでいたので、いい作品を作ろうとかの意識や熱意をまったく放棄して、ぼんやりしているときに、むこうから「ことば」がやってきた。これが、「ぽっかりつきがでましたら」で、そのとたん、すぐに「本になる」と思った。

 

ぽっかりつきがでましたら

ぽっかりかばもでるでしょう
ぽっかりつきがでましたら

ぽっかりとまともでるでしょう

 

この展開のおもしろさ、意味の無さ。自在なことばの世界。

 

看板職人をしていたとき、事故でけがをしで仕事ができなくなったことがきっかけで、「童話を書こう」と決意した。マンガを書いていた長新太に注目していて、「へんだぞ、おもしろいぞ」と思っていた。

そこで、長氏に絵を依頼して、『さかさまライオン』(内田麟太郎文/長新太絵/童心社)でデビューする。『絵本にっぽん絵本賞』を受賞したことで、次へとつづいた。

 

童話とは違う、「絵本のことば」を自分自身で考えた。参考にしたのが、映画や芝居のシナリオだ。これで、自分のやりかたを見出した。ト書きがヒントになった。それに、若い時から、映画が好きでたくさん観ていたことも加わった。無心になったときに、ことばがぽっかりうかんでくるのは、それまでの貯金があったからこそだ。

 

たまたま、ぽーっとしているときに、浮かんだのが、「ともだちや」ということばだった。

「ともだちや?」こんなことばは、今まで聞いたことがない。こんなことを考えるのは、わたししかいない。新しいことばに、自分自身が驚いた。これが、『ともだちや』(内田麟太郎文/降矢なな/ 偕成社)になった。絵を依頼した降矢氏に自由に書いていいといったところ、ほんとうに、自由に書いてくれた。自分のイメージを超えるものになった。

内田氏はそう話したあとで、「ものを作りだすには、驚きがないと書く値打ちがない。新しいものに出会いたい」と、きっぱり言いきった。

絵本は、絵と文で作るもの。文だけで、世界が見えるように書いては絵本にならない。絵と文が溶け合って、化学変化をおこさせて、新しいものを作り上げる。

内田氏は、萩原朔太郎、西脇順三郎などの詩人の名をあげながら、ひょいと坂上二郎を取りあげたりして、笑わせながらも、創造の厳しさを話された。

内田麟太郎の麟は、幻獣の麒麟。その麟がきらめいていた。1時間の講演が、あっというまだった。

記念会にふさわしい講座の軽妙さと熱気をそのまま持ち帰り、児童文学に関わる中で生かしていきたい。

レポート 妹尾良子

2016年関西センター春の講座(第2回目)

 

日時 2016年5月8日(日)13:30~16:30

参加者 14名

 

講師は楠章子氏。アシスタントは上坂和美氏。前回のオリエンテーションを経て今回から4作ずつの実作指導に。各40分前後の時間帯で最初に講師側からの講評・作者の意図・数名の受講生の感想を聞き、フリートークも交えての講評が行われました。

 作品の具体的内容には触れませんが、4作品を通じて下記項目につき講師の先生方と受講生の方々からも詳細なご指導を頂きました(抽象的・大雑把で申し訳ございません)。

 

 ●文章ルールの基本を守る(出版社によって違う部分はアバウトでよい)

 ●読者対象グレードを意識して書く(低・中・高学年・中学生以上のヤングアダルト)

 (言葉の選択・構成に反映)(めざすグレードの書籍を分析する)(文体・内容に合ったグレードに書き変える)

 ●構成の順番入替や、段落のつなぎ・文体の癖を直して読みやすさを工夫する

 ●ネタを絞ることでも読みやすくなる(もし複数ネタを盛り込みたいなら、200枚以上の長編で双方を濃密に書くか、むしろ別々に2作書いた方がよい)

 ●展開には「山・谷」をつくる

 ●他の筋立て(結末)のあり方も検討する(より感動的に作り込む)

 ●舞台・状況のリアリティある描写の必要性(目に見えるように・不自然さや違和感を読者が感じないように)

 ●登場人物の個性の作り方(キャラ立て)・人物の整理、絞り込み

 ●児童文学としてふさわしい登場人物(視線)を主人公に据える(主人公に沿って読み進めてゆけるようにする)

 ●主人公には葛藤させる

 ●児童文学でこれまでにあまりない書き方・ジャンルへの取り組みは面白く新鮮

 ●哲学的素材の対象としては小学校5年6年(高学年グレード)位の読み物にすると良い

 ●社会的・時事的な話題には取材(リアリティ)の必要性・重要性が増す(編集者チェックがより厳しくなるジャンル)

 ●モデルにされそうなタブー(犯罪や危険行為等)イベントはあえて書かない(ワンランク緩いイベントに変える)という選択が児童文学では無難(書く必然性あるなら、厳しい対処(処罰など)の展開も併せて示す(現実社会での処罰を書くなら、内容が正しいかにつきチェックも必要))

 ●一般的な広い読者向けではなく個性作家を目指すという選択もある(一般向きにしたいなら普遍性は意識する)

 ●現代っ子の言葉使いになっているか常に要チェック(不安なら一人称の独白を避けて、「三人称」の表現を選ぶ)

 ●現代っ子の感性とのリンクを意識(イマドキか、昔の子ども感覚になっていないか)

 ●その設定から読者の多くが期待するだろうという展開・キャラ立てなどを意識する(期待に応える)

 

 総括アドバイスとして、下記の大切さを再認識しました。

 「主人公たちが何に悩み、何をみつめて歩いてゆくかを書く」

 「主人公たちが「自覚」していく姿勢を、具体的事件(イベント)を通じて書く」

 「作者が書きたかったことは何か、を意識する」

 

  また、『講座への提出作品は完成稿ではないので、置いておかずに書き直しをしてくださいね』 との先生のお言葉も印象的でした。

  和気藹々の雰囲気の中、具体的作品を通じた貴重なアドバイスの連続で、とても充実した数時間を頂きました。ありがとうございました。

レポート 森木 林

2016年関西センター春の講座(第3回目)

 

日時 2016年月6月12日(日)13:30~16:30

参加者 15名

講師は後藤みわこ氏。アシスタントは北ふうこ氏。

講座もいよいよ第3回。佳境に入り、今回も4作ずつの実作指導が行われました。

複数の公募の審査員もなさっている後藤みわこ氏は、始まるにあたって「選考する側からの視点にたって、または、持込みされた原稿を読む編集者の視点での講評をします」とのべられました。

合評作を提出された4人だけでなく、受講生全員が得難い貴重な体験をさせていただけました。

 

作品を公にすることはできませんが、いただいたお言葉の中で、印象深いものを記録しておきたいと思います。

 

①ふだんから、公募規定枚数上限いっぱい、できちんと書く訓練をしておくほうがよい。

②デビュー作を書くつもりなら、すでにあるキャラは使わない。

③最初に審査員が首をかしげないよう、わかりにくい点は随時あきらかにしながら書く。

④長篇では特に、仕掛け、オチが大切である。

⑤物語の世界、人をまず、自分の頭の中でくっきり描くこと。本になった時、どんな絵がつくかイメージするとやりやすいかもしれない。

⑥物語の方向性は常に明確にしておくこと。

⑦主人公の視点は絞っている方が、読者が理解しやすい。

⑧震災など現実にあったことは、どんなに有名な事例であっても、その事実を知らない人が容易にイメージできるように描写すること。

⑨書き手は主人公を愛していなければ書けない。

⑩ファンタジー、sfなどは、なんでもありの技を使っていないか、注意が必要。

⑪台詞は必ず、口にだして言ってみること。

他にも、応募原稿のあらすじは最後まできちんと書くこととか、すでに今年デビューされる受講者には、いろいろな心がまえをうかがえました。

みんな一様に、励まされ、今後の力とさせていただきました。                                    

レポート 森くま堂

 

関西センター絵本講座 ~現役編集者による絵本講座~ 【 絵本テキスト創作講評 】

 

2017年1月22日 11:00〜16:30 参加者22名

 

 

講師は、数々の人気絵本を手がけている鈴木出版(株)の波賀稔編集長を再びお迎えしました。

氏は作者の意図・想いにふれながら編集者の視点からじっくりと講評してくださり、大変有意義な講座となりました。

作品をより良くするために述べられた、温かくも鋭い評に受講者は真剣にメモをとっていました。

 

アシスタントは前半、服部千春氏、後半おちまさ子氏。

提出作品は22作で文章(テキスト)は前もって受講者にデータで送っており、絵コンテのある場合は、当日配付しました。

講評の詳細は記せませんが、要点は以下の通りです。

 

【絵本テキストの書き方など】

◆絵本テキストは、シナリオのようなもの。芝居の脚本をつくるような感じで、登場人物が「しゃべる」「動く」のが大事

◆ト書きは、補足として考える。書き込みすぎない。

◆文章は短く、こどものわかるぴったりした言葉で、ひらがなにする。

◆1見開き10行、20字までがよい。

◆七五調は軽くなりがち。無理に字数を合わせようとして無駄な言葉や説明不足になる。ストーリー性がある話は、あえて七五調にこだわらない方がよい。

【構成・題材など】

◆話をひろげすぎないで絞っていく。そうしてそこを展開していく。

◆つながっていく話はよくあるが、安定する。関連づけていける工夫が必要。

◆最初の見開きは、あれもこれもいれないで一つのことにする。

◆場面割りでは、特別おもしろそうな絵になりそうな感じがしない場合は、まとめて同じ場面にしてみる。

◆テーマにあった題材を選ぶ。

 

【登場人物など】

◆主人公を人間にするのか、あえて擬人化するのか吟味が必要。

◆ある程度、生態を残して擬人化する場合は食べ物など、その動物の生態を調べておく。

◆登場人物はしぼる。

◆登場人物の性格づけが大事。それによって話が動きだしていく。

 

【その他】

◆何歳児はこんな感じというのを、作者はつかめていないといけない。

◆固定観念にとらわれないで先人が使ったのをそのままではなく、自分の言葉で表現する。創作の創は、はじめという意味である。

 

絵本は、ひらめきや感覚で描くものと思っていましたが、エピソードの組み立て方やストーリー性など、長めの物語を書く場合と似ていることや、絵本は文章が短いがゆえに言葉の選択には、神経を研ぎ澄まして使わなくてはいけないことに気付かされました。

 

午前中から始まった講座も、終わったときには日が暮れかかっていました。長時間に渡り22作品全部を丁寧に講評してくださった講師の波賀氏には深く感謝いたします。

頂いたたくさんのヒントは、受講者のさらなるステップへの大きな力となったことと思います。

 

レポート とうや あや

関西センター絵本講座 ~現役編集者による絵本講座~

 

2016年11月27日 13:30〜16:30 参加者40名

 

 講師は鈴木出版の波賀稔編集長をお迎えしての講座。30名で募集のところ希望が殺到し、当日は雨天だったが40名の参加者となった。

 

 自己紹介のあと、絵本の分類で、多様な視点から絵本というメディアを捉えたうえで、本題の「絵本とはどんなものか」「絵本の文と絵の関係」を実際の絵本を例にいくつか提示しながら説明された。

 

 要約すると絵本は「絵(または絵と文)を用いてストーリやテーマを効果的に表現したもの」である。

絵本は絵と文の相互作用がありお互いを支えあっている。

 文だけで成立するものは絵があっても絵本ではなく絵童話となる。

 

 絵本作りのキーポイントは〈メッセージ(テーマ)、リアリティー、ファンタジーの出入り口、起承転結(ドラマ性)、必然性、擬人化、成長、めくり〉の8つ。

 その中で「めくり」という絵本独特の特性は非常に大事で、めくることを意識してテキストを制作する必要がある。

 これらのポイントに照らしあわせながら自分の作品を推敲することで、良い作品に近づけられるものと思う。

 また、絵本のタネの育てかたや昔話は絵本のタネの宝庫であること、プロの作家でも間違えること(単純な間違いや知識不足の間違いなど)があることも例をあげて解説された。

 

 何をどう描いて読者に伝えたいのか。これから描く人も、今まで描いてきた人も、新たな気持ちで制作に励まれることと思う。

 

 なかなか採用されないよ・・・と悩む人へ、波賀編集長から救いの言葉が最後にあった。

「編集者によって違う見方をする。この人に断られたからダメだと思わなくていい。思わずいい編集者に当たることもある」                        

 

 レポート かこ まさみ

2016年関西センター春の講座(第4回目)

 

日時2016年7月10日(日)13:30~16:30

参加者 15名

講師は服部千春氏。アシスタントは中谷詩子氏。

講座は4回目となり、回を重ねるごとに受講生間の親睦も深まってきました。受講生が同人誌や地域の枠を超え、創作について毎回交流できることは、連続講座ならではの良さだと思います。

 

人気シリーズなど多くの作品を世に送り出されている服部氏が、講座を始めるにあたりあげられたテーマがありました。それは、『成りきって 書ききろう!』です。

 

最初に服部氏はデビューの頃のエピソードに絡め、当時から読み込んでおられる教本を四冊ご紹介くださいました。(『実践 創作入門教室・日本児童文学者協会編 文溪堂出版』他)

その後、今回も4作について実作指導が行われました。作者の想いや参加者の合評も交えながら、講師やアシスタントの先生方から貴重なご意見やアドバイスをいただけました。

 

その中で印象深いお言葉を記します。

①提出作品は完璧でなくてもいいので、アドバイスをもとに書き直し完成させていくことが大切。

②物語の動機やモチーフをどう書いて山場に持っていき、どのようにその山を下りていくかをしっかり設定する。

③エピソードを積み上げながら、主人公が行きたいところに行きつけるのが物語。

④作品のテーマを中心に、より深く書き込んでいく。

⑤読者対象年齢の子どもが、実際に目の前にいることを想像しながら表現する。

⑥書き過ぎず行間で読ませる工夫をして、自作を冷静な目線で読む。書き手が自作の読者になる。

⑦表現を複雑にしないで、目に見えるものを普通に素直に書く。

➇書き手は作品の中のどんな登場人物にも最後まで責任を持ち、書きっぱなしではいけない。

➈子どもの頃の体験を自分がどれほど多く覚えているかで、児童文学作家の資質が見えてくる。

➉SFやファンタジー作品も、説得力のあるリアリティが必要。

 

最後に今関信子氏から、熱い励ましのお言葉を受講生にいただきました。貴重な学びの時間を、次なるステップにつなげる力とさせていただきました。

 

                                       レポート うたかいずみ

2016年関西センター春の講座(第5回目)

 

日時2016年8月21日(日)13:30~18:10

 

4月からはじまって5ヶ月続いた小説講座の、最後の回が行われた。

 

この日はお盆から1週間が経ったものの、夏休み中ということもあってか、移動の新幹線の中は満席だった。日差しは厳しく、立秋は過ぎたが、残暑とは呼べぬほど暑い日での講座となった。

 

講師は奥山恵先生。アシスタントは服部千春氏。  先生ははじめ、児童文学のジャンルと歴史について語られた。ジャンルにはメルヘン、ファンタジー、日常物語などがあるが、その中で自分の作品がどの位置にいるかを意識したほうが良いと仰った。自分の作品を型にはめるということではなく、それぞれのジャンルにはそれぞれの魅力があるので、それを意識することが大切である。また良い短編の書き方として、アイデアとオチ、そしてその短編にまつわる強烈なイメージが大切であるということだった。この話のイメージはこれ、これと言えばあの作品、というように、明確なイメージをひとつ持つべきということだった。  そのあと、4人の作品が講評され、拙作も講評の場に乗った。おもに上記の方法論に沿って、ほかの作品にも生かせる論理的な講評だった。講座の回が進むにつれ、受講生の発言も活発になり、より多角的な感想が出るようになった。評価が大きく割れる作品もしばしば出ていた。

 

講評会のあと、軽食を囲んで懇親会が開かれた。そこでは次回の講座についてのプランが話し合われた。「多くの種をまけば、芽はかならず出る」ということ。それはこうして作家志望者を育てることが大事という意味でもあり、またわれわれ志望者が、多くの作品を生むことが大切という意味にも感じられた。  筆者は本講座に初めての参加であったが、懇親会でも多くの意見や感想をいただき、充実した回となった。児童文学についても初心者のようなものであり、児童文学はSFから歴史ものまで、幅広いジャンルを内包していると思った。講座場所はやや遠方であったが、多くの作家の方々の話を生で聞き、貴重な体験となった。  

 

レポート 黒田なぎさ

2016年関西センター 短編創作教室

日時  1月31日(日)13時30分~16時30分

参加者 16名

 

今回は、岩崎書店などで40年間も編集に携わってこられた敏腕編集者の津久井恵氏をお迎えした。

前半は、氏が編集者として考えてきたこと、また今考えていることをテーマに話していただいた。

氏は、新人の作品を年に一冊は出版するよう心がけてこられたそうだ。

新人賞や文学賞を受賞した現在活躍中の作家さんたちとの出会いや1985年以前、個人の短編集が売れていた時代の作家さんのお話、短編と長編の違いなど、興味深く聞かせて頂いた。

現在は作家の短編集出版はむずかしく、多著者によるアンソロジーという形での出版に変わったそうだ。

 

印象に残ったのは、短編を書くならこんなところに注意すればいいというお話だった。

短編の場合は限られた枚数なので、作品に強弱が必要だということ、そのためには思い切った省略をすること、どこをしっかり書いて、どこを省略するのか、メリハリをつけると作品が印象的なものになる。また伏線をはりめぐらし、結末のどんでん返しにもっていくのは短編ならではの楽しみ。小道具をうまく使うことも大事など、具体的に比喩を使っての説明がとてもわかりやすかった。その他、タイトルの付け方、無駄な会話を省くなどの話が参考になった。

 

後半は、提出作品のひとつひとつにコメントを頂いた。氏は作品を読む時、三つの基準で判断されるという。

➀好感が持てる作品かどうか

②題材・ストーリーが新鮮か

➂いい意味での娯楽性があるか

 

作品提出者は、どこをどのように直せばいいのか、たくさんのヒントを頂いた。それぞれが自分の作品をもう一度見つめ直し、印象的な短編に仕上げてほしい。

その後は質疑応答で盛り上がり、津久井氏のほっこりした語り口のお話にひきこまれた3時間だった。

 

                                                                       レポート 上坂和美

2015年 関西センター春の講座(第5回)

日時 8月9日(日)13時30分~16時30分

参加者 17名

 

今回の講師は、あんずゆき氏。アシスタントは安田夏菜氏。連続の創作講座も最終の五回目とあって、受講者同士打ち解けた雰囲気で講座が始まった。合評作品は、今回も四作品。長さは原稿用紙換算10枚から100枚以上のものまで長短あったが、合評時間は等分に配した。

 

まずは、あんずゆき氏が講評を聞く姿勢を話された。「作品に対しての感想は人さまざまではある。それでも多数の評者があっても、感想に必ず重なる同じ部分というのがある。つまりみんなが言う同じ意見。それは納得して受け入れるべきだ。」ということを説明された。それはよく言われる、真摯に聞く耳を持とう、ということにもつながるだろう。その上で、各作品の合評は、まず受講者数人に感想を伺い、つぎに安田夏菜氏が講評し、あんずゆき氏が講評をまとめる、という形式で進められた。講座も五回目なので、ざっくばらんとまではいかないものの、活発に意見が述べられている感があった。安田夏菜氏も講師のあんずゆき氏も、作品をもっと良くするために、温かくときに厳しい意見をも述べられていた。おざなりではない的を得た批評に向けられた、受講者の方々の真剣な目が印象的だった。

 

あんずゆき氏の講評の中で、「ある程度書ける人が次の壁を打ち破るにはどうすればいいか」という言葉が特に印象的だった。「ある程度書ける人が陥りがちな、そこそこうまいけれどもありがちな作品から脱却する方法」という言い方もされていた。それくらい、今回の参加者の作品はよく書けている手慣れた感じのものが多かった。作品の個性化をはかるためには、自分なりの特別なものやテーマを見つけそれを深めていく。日常の中から拾えることは多いので、常に意識のアンテナをはろう。これらの言葉は参加者皆が大変参考になったことだろう。

 

合評作品の中に、現職の小学校教師でもある作者が、貧困家庭児を題材にしたものがあった。この作者が語る学校現場で少なからず占める貧困家庭児の話は、大変興味深く参加者皆大いに考えさせられることだった。全体として、打ち解けて自然と率直な感想を言い合える雰囲気ができていた点は、同じメンバーで連続しての講座であったからこその利点だったと思われる。

 

講座終了後は打ち上げとして、全員参加でサンドイッチと菓子類とソフトドリンクで懇親会を開いた。さながら楽しく明るい茶話会の様相だった。ここで参加者全員に一言ずつ感想などをいただいたが、概ね皆が講座に満足の意を唱えてくださっていた。皆で写真を撮り合ったり歓談に興じる中、参加者皆の表情が一様に明るいことに、関西センター運営委員たちは大いに安堵し今後の励みとしたことだった。

 

レポート 服部千春

2015年関西センター春の講座(第4回目)

日時  7月12日(日)13時30分~16時30分

参加者 16名

 

本日の講師は、今関信子氏。アシスタントは、中谷詩子氏、楠章子。長編作品が多かったため、今関氏お一人に講評をお願いするのでなく、司会進行役のアシスタントも合評に参加するスタイルをとった。合評作品は4作。

 

まず今関氏に、批評の受け取り方を話して頂いた。さまざまな批評をどう処理し、どう活かしていくのか。大切なのは、何をどう書こうとしたのかであり、作者がそれをしっかりわかっていれば、さまざまな批評の中から作品のために必要な批評が見えてくるし、その批評を書き直しに上手く活かせるはずという事。

 

1作ずつに出た批評の詳細は記さないが、文体について細かな指導があったり、構成の技についてのお話があったり……今関氏は惜しみなくプロの手法を教えて下さった。プロというのは読者がその作品に興味を持ち、楽しめるように、文体を工夫し、構成を練り、巧みに盛り上げたり、気持ちよく感動させたりするのだと思う。「私ならこうするよ」と今関氏が語って下さった手法は、本日の合評作品の作者だけでなく、受講者全員の参考になったのではないか。

 

また、その他話題となった事に、「古く感じる」というのがあった。言葉選び、会話、小道具、設定……無意識に古く感じさせるように書いてしまっているのは、いかがなものか。しかし、読者に古く感じさせるかもしれないファクターを、全て「今」を感じさせるように直していくのが正解という訳ではない。「今」はどんどん「古く」なっていくのだから、長く読み継がれる作品を書きたいと考えている場合には、「今」を盛り込みすぎるのは危険である。作者は、そこのところをよく考え、書くべき。そのためにも、無意識に書いてしまっているのは、やはり良くない。今の子どもたちを観察し、今の時代を見つめ、「古さ」と「今」をわかった上で、書かなければいけないのではないかと。

 

始めに記したように、本日はアシスタントの二人も積極的に意見をのべたので、メイン講師である今関氏の批評やアイデアとは、また別の批評やアイデアも提出された。受講者の皆さんにも、一言ずつ批評を頂いた。本日の合評作品の作者は、混乱しているかもしれない。けれど、初めに今関氏に話して頂いた批評の受け取り方を思い出し、各作品ぜひ書き直してみて頂きたい。最終的に、どう書くかは作者次第。

                                レポート 楠章子

2015年関西センター春の講座(第3回)

日時   6月14日(日)13時30分~16時30分

参加者  16名

 

実作指導の2回目は、東京から丘修三氏を講師にお迎えした。アシスタントは上坂むねかず氏で1作品につき40分程度で4作ご指導頂いた。講座の進め方は、ま ず作者の想いを聞き、その後、数名の受講生にアドバイス頂き、最後に、講師の講評をうけるというものだった。以下暖かくも鋭い講師の評を少しだけ抜粋した い。

 

1つ目の作品については、作者がお話をつくることが好きな点が良かった。しかし、問題点は登場 人物が何もしていないし、問題が何も解決していないことだ。書くということは人間を書くこと。人間についてもっと考えることが必要。そのためには、人の作 品を読むことが大切である。

2つ目の作品については、作者の発想がおもしろかった。しかし、無駄な文章がたくさんあったし、章立ても多すぎた。また物語の設定をなるべく早く読者に知らせること。登場人物を必要な人に絞ると、この作品は30枚位の物語になる。

3つ目の作品は、3・11の全貌をさまざまな資料にあたって書いておられることに敬意を表する。ただ読者対象が小学生の場合、ドキュメントに創作をうまくはめこんでいく必要がある。事実を網羅しようとするあまり創作部分が希薄になってしまったのが残念。

4 つ目の作品は、子どもの発想で書かれ、有り得ると思わせてくれる作品だ。しかし家庭の問題がさらりとしか出てこない。葛藤要因は、何なのかをはっきりさせ る必要がある。全体としてセリフが生きていない。丁寧すぎるのと、この場面では言わないだろうというセリフが散見した。

 

4作とも作者の書きたいテーマが伝わってきた。講師の評をうけ、さらにグレードアップしてもらいたい。講座も3回目となり、少人数の受講生同士の交流も深まってきつつあるようだ。講師の本のサイン会もあり盛り上がっていた。 

                                                                                                              レポート 上坂和美

2015年関西センター春の講座(第2回)

日時   2015年5月10日(日)13:30~16:30

参加者  14名

 

4月から始まった春の講座、前回はオリエンテーションで、今回からが実作指導となる。

講師は中川なをみ氏、アシスタントはおちまさ子氏で、1作品につき40分程度で合計4作品についての指導が行われた。

 

まずは参加者の中から数名ずつ感想を聞き、続いて作者の思いを聞き、最後に中川氏からの講評という形で進行した。

中川氏は、それぞれの作品について、テーマを設けて分かり易くアドバイスして下さった。

 

1つ目の作品のテーマは「児童文学ってなんだろう」。

児童文学は、子どもが読むものであるから、一番判りやすいのは主人公の年齢を子どもにすることだが、主人公がおばあさんだったとしても、児童文学にすることができる。それは、「目線を子どもにすること」である。

 

2つ目の作品については、「積み上げる」。

短 編の作品の場合は、積み上げる作業よりも、インパクトだったり、切り口だったり、重要視されることが他にもあるが、長編の作品を書く場合、「積み上げる」 作業が必要である。「積み上げる」(あるいは「深める」)という作業をせず、ただエピソードを並べるだけでは平坦な作品になってしまう。

 

3つ目の作品については、「構成について」。

山場をどこにもってくるのか。全体のエピソードのバランスはどうか。

 

4つ目の作品については、「わりやすさってなんだろう」。

わかりやすい作品にする方法は、「ことば」と「表現」をわかりやすくすること。観念的な作品だと、書き手と読み手の認識にずれが生じる。ファンタジーであればあるほど、リアルに描かなければならない。

 

今回の4作品は、どれも力のある面白い作品で、かなりの書き手が集まったことを改めて感じた。今回のアドバイスを受けて、さらに作品の質が高められるのではないかと思う。

講師の書籍の販売もあり、講座後はプチサイン会と化して、和やかにお開きとなった。

 

                                                                                                                                              レポート 北 ふうこ

 

~児童文学カフェ~〈紙芝居 はじめの一歩〉

 

2015年2月15日(日)13:30~15:30

参加者21名

 

第3回児童文学カフェは、紙芝居がテーマでした。ナビゲーターの今関信子氏は、紙芝居を実演しながら具体的な書き方を教えてくださいました。

まずは、紙芝居が絵本やまんがやアニメなどの子ども文化のひとつだということ。子どもを取り囲んでいる文化財として大切にしていきたいとの思いを語られました。

 

紙芝居の特徴は、シナリオ、絵、そして演じることの三つがそろってはじめて成立する総合芸術であるということです。

 

シナリオに関してのアドバイスを頂きました。具体的には場面割りして書く。原作から脚色するときは山場を感じとる力が必要だということ、またセリフに凝ること。子どもと一緒にいかに遊ぶのか、しかし、子どもたちのスケッチに終わらず、大切なものを伝えていこうという言葉が心に沁みました。

 

小さい子どもたちには、語りかける声が大事で武器となります。今関氏のお声の強弱、大小の魅力に、あたたかくいい気持ちになりました。観客が参加でき、みんなで豊かな空間を作り出すことができる紙芝居ってすばらしい。途中、ティタイムや質問タイムもあり、あっという間に過ぎた2時間でした。

 

                                                                                                                                                レポート 上坂和美

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